「しっかり」の持つ言葉の意味がぐらついている。
そう感じてから1年近くになっている事に気づいた。
ことあるごとに耳にしたせいかもしれない。
はたまた、言葉と裏腹に「しっかり」の中身が感じられなかったからかも。
言葉で働きかけることは、信用を築く上でこの上なく重要だと知る。
しかもそれが、代弁してくれる者に託す側と託される側との間では特に。

真っ先に結果論であることを述べた上で先日の参院選絡みのことなど。
昨年夏に行われた衆院選で政権交代がなされた。
その時の投票行動において白紙を投じたと書いた。
支持者も支持政党も無い状態だったので当然の結果。
けれども、有権者として選挙権を安易に放棄するのではなく、支持なしの意思表示をすることで国政に物申すことにした。
誰もどこの党も支持できる状況だとは思えません。と。
そんな1個人の思惑などどこ吹く風で一気に政権交代がなされた。
それに対して思ったことは、機運がソウであればソウなるのだなぁ…。
どうあれ静観するつもりなのだから見ていよう。

見続けて(聴き続けて)いて今回の参院選までの間にあったこと。
政治と金の旧態依然とした問題点の露呈。
それに端を発しての政権交代初代首相の辞任。
その首相の遺したことの大きさ。
選挙を睨んでの新首相誕生。
選挙直前での禁足地である消費税への言及による失速。
直感的に「政権与党として大丈夫?」と、不安を抱いたのだろう。
中身を具体的に述べなくとも、今回の選挙結果は失望の表れだと考える。

では、個別具体で考えてみる。
印象に残っていることの最も大きな事柄として前首相の存在がある。
前首相でありながら、今回の選挙戦中ほとんど報道場面で見なかった。
これはなんだろう?
政権交代を果たしてからの実績を前面に押し出しての選挙戦であるべき。
これが可能ではない状況の下で選挙をせねばならないのは辛い事だろう。
なにも政権与党に限ったことではなく、選んだ有権者にとっても同じこと。
耳に残っている前首相の発言の数々。
「国民の皆様の声をしっかりとお聞きし云々」
「困難な状況ではありますけれども、しっかりとお話をさせていただき云々」
「しっかりと云々、しっかりと云々、しっかりと云々…」
しっかりとした結果が、同盟関係の揺らぎや国民の期待を真っ向から否定するものであっては、国の舵取りを任せるに不安を抱いても至極当然に映る。

悪い事ばかりではなかった。
前政権にあっては実現しなかったであろう事業仕分け政策。
この政策を担当し業績を評価されての担当大臣の当選は素直に頷ける。
実際、多くの公益法人や独立行政法人などの未知の部分を知った。
中でも衝撃だったのは、宝くじの収益金が自治体に還元されるべきところが役員の報酬に使われていたとの事実。
夢を買い、外れても公共の福祉に資するからと買っていた人の思いが霧散。

総体的にみると、新政権である以上新政策と新方針と力んだ結果に映る。
政権が変わったからと言って、改憲を行い国体転換を図る大事業を成し遂げる目的がないのであれば、外交上の基本合意などの他国との関係性は国対国であって政権ごとにゆらゆらしないものだと承知していると思っていた。
その上で、独自性を出すための案を練り協議する。
相手国から会談を拒否されるのでは相手国との親密な関係性が危ぶまれる。

最後に、今回の投票行動では候補者の氏名と政党名を記入して投票してきた。
選挙区と比例区の両方で有意義に選挙結果に反映されたと思う。
有権者が投票する時、政治は身近にあるのかもしれない。
投票率が下がり政治離れだと言われる原因は、誰かがどうにかする感じ。
投票に行こうが行くまいが生活に困窮する事態に至りはしないと思い込む。
そして、たぶんそれで大きく間違ってはいないのだと感じる。
日本が進んで戦争を始めることなど有り得ないと考えているだろう。
金融不安・景気低迷と言っても、世界経済の動向次第で変わるのだから独自の経済政策として何が出来るのかわかる人もいないと感じているのかも。

代議士の言葉の空洞化は最も危惧すべき事なのではないだろうか。
期待してもどうせ当てが外れるからと距離を置かれては国政は危うい。
「しっかり」と代議士としての政治家の立場で大いに議論してほしい。